この記事では血液内科志望の初期研修医・3年目以降の血液内科の専攻医向けに、おすすめの参考書を紹介します。
この記事で紹介すること
血液内科を専攻した先生たちの当面の目標は、日々の血液内科診療をこなすことと、新内科専門医・血液専門医を取得をすることだと思います。
この記事では、数ある血液内科の参考書の中でも、上記の目的に沿った特におすすめの5冊を紹介していきます。
血液内科志望だから初期研修のうちに、より進んだ勉強をしたい
3年目から血液内科を専攻するがまず何を勉強したらいいかわからない
という方は参考にしてください。
この記事では、血栓・止血領域、造血幹細胞移植領域の本は紹介していません。
これらの勉強には、 下記を参照ください。
この記事で紹介する5冊
この記事で紹介するのは下記の5冊です。
- 血液内科ただいま診断中!
- 血液内科ただいま回診中!
- 多発性骨髄腫の診療指針 第5版 (2020/9改定)
- リンパ系腫瘍診療ハンドブック
- 血液専門医テキスト
①血液内科ただいま診断中!
この本の役立つ場面
- 血液内科外来で困ったとき全般
- 血液疾患疑いの患者の診断のフローチャートが診断の役に立つ
この本でわかるようになること
- 血液疾患疑いの患者が外来に来てから、診断、治療の一通りの流れを勉強できる
- 疾患毎のrisk・stage分類および予後
- 血液疾患の患者の外来でのフォローアップ方法
本書はで、主に血液内科外来での疑問を解決してくれる本です。
3年目以降、初めて血液内科外来を担当する若手医師に必携の本です。
著者は、埼玉医科大学総合医療センター血液内科の渡邉純一先生です。
非常にわかりやすく、若手医師がつまずきがちなポイントを押さえています。
最新のエビデンス(2017年発行)に基づいた記載がされておりながら、若手にわかりやすく書かれています。
各領域ごとに、
- summary: 疾患毎の診断基準、リスク分類、予後など(表や生存曲線を使っている)
- introduction: 導入の知識と最新の話題など
- case: 血液専攻医と指導医による仮想症例のdiscussion
- まとめ
といった構成になっています。
特にcaseの項は典型的な症例の診断から治療までの経過が書かれておりイメージしやすいです。
各領域ごとに細かく勉強する必要は後々出てくるとは思いますが、まずはこれで全体像を把握するのがおすすめです。
本書のはじめに、
この教科書の目的は「血液内科専門医」ではない医師,血液内科を研修中の初期研修医,新内科専門医制度に伴いスーパーローテートをしている後期研修医,血液専門医を志望する医師,一般病院・クリニックで血液疾患が疑われる患者を診た医師,病院実習中の医学部学生が血液疾患の診断過程をイメージしやすくなり,診断までたどり着くことができるようにすることです.
血液内科ただいま診断中 渡邊純一先生 序 より
と書かれており、まさにそのとおりでした。
私は、専門医試験直前に全体像を復習するのにも使いました
②血液内科ただいま回診中!
この本の役立つ場面
- 血液内科病棟で困ったとき全般
- 今使っているレジメンで注意することを知りたいとき
この本でわかるようになること
- 血液内科病棟で使用するレジメンが一通り勉強できる
- レジメン毎の副作用が時系列ごとにわかる
- レジメン毎の感染症予防がわかる
本書は、血液内科病棟での疑問を解決してくれる本です。
著者は、血液内科ただいま診断中!と同じくの渡邉純一先生です。
その名の通り、 血液内科ただいま診断中! の病棟版という位置づけです。
これまで血液内科病棟で主なレジメンを参照するときは、”静岡がんセンターから学ぶ最新化学療法&有害事象マネジメント 血液腫瘍編 (静がんメソッド)”(2016年発行)を使用していました。
しかし、ただいま診断中!の姉妹書であることや最新のレジメン(2020年発行)も載っていることから今回はこちらをおすすめとさせていただきました。(しずガンメソッドももちろんおすすめです!)
各レジメン毎の副作用が時系列で書かれており、どの時期にどんなことに注意すればよいかがわかります。
いつどんな副作用に注意すべきかというのは診察上非常に重要!
掲載されているレジメンについても、他書で解説されていないものの実臨床で使うことが多いレジメンの詳細が記載されていました。
CAG療法が載っているのはありがたかった。
また、化学療法の副作用として感染症が特に重要ですが、本書では
- 抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬の予防投与
- B型肝炎の再活性化予防
- 発熱性好中球減少症
に関する記載がガイドラインを引用しつつ丁寧に解説してあり、役立ちます。
なお、造血幹細胞移植の合併症についても症例ベースでわかりやすく書いてありますが、移植に関しては特殊な領域なので別で勉強する必要があります。
③多発性骨髄腫の診療指針
この本の役立つ場面
- 多発性骨髄腫の症例を受け持ったとき全般
この本でわかるようになること
- 多発性骨髄腫の診断、治療、予後
本書は日本骨髄腫学会が発行している、多発性骨髄腫の教科書です。
多発性骨髄腫および類縁疾患の診断、治療、予後が網羅されています。
多発性骨髄腫の治療は日々進歩しており、時期によっては毎年のように新薬が承認されてきました。
本書は2020年に第5版が出ています。
④リンパ系腫瘍診療ハンドブック
この本の役立つ場面
- 悪性リンパ腫の症例を受け持ったとき
この本でわかるようになること
- リンパ系腫瘍のマイナーなレジメン
- リンパ系腫瘍の鑑別診断、治療、予後
本書は磯部泰司先生、塚田信弘先生、佐々木純先生らが共著された一冊です。
A5サイズで持ち運びしやすい一方で膨大な情報量を有しています。
一般的な血液内科病棟では入院患者の半数は悪性リンパ腫だろうと思います。
本書はリンパ系腫瘍の診断、治療、予後について、コンパクトなサイドながら情報量の非常に多くまとめてあります。
一般にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫をはじめとする悪性リンパ腫の救援化学療法は、
- 決まったものがない
- 施設ごとで頻用するレジメンに多少の違いがある
- レジメンの種類が多い
などの特徴から勉強しづらいです。本書では、レジメンの投与量・スケジュールを参照できます。
そのほか、日本ではあまり頻度は少ないですが慢性リンパ性白血病の類縁疾患の鑑別の表などはよく参照します。
⑤血液専門医テキスト
この本の役立つ場面
- 血液専門医試験の対策
この本でわかるようになること
- 血液専門医に必要な知識
本書は日本血液学会が公式に出している専門医テキストです。
専門医試験の勉強には必須の1冊です。
実際試験を受けてみると、このテキストに掲載されている文章・解説がそのまま問題の選択肢になっていることもあり、この本をbaseに勉強するのが良いのだろうと思います。
巻末に直近の過去問(一部)が載っています。
記事のまとめ
今回は5冊の医学書を紹介しました。
- 血液内科ただいま診断中!・・・血液外来のはじめに
- 血液内科ただいま回診中!・・・病棟でつかうレジメンの副作用のチェック
- 多発性骨髄腫の診療指針 第5版 (2020/9改定)・・・日々進化する骨髄腫治療のおともに
- リンパ系腫瘍診療ハンドブック・・・A5版と小柄ながらもすさまじい情報量
- 血液専門医テキスト・・・専門医試験に向けての教科書として
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