この記事では、
・若手血液内科医
・血液内科志望の初期研修医
・血液内科ローテーション中で移植患者を受け持った初期研修医
に、造血幹細胞領域のおすすめの参考書を紹介します。
この記事で紹介すること
この記事では、非常に専門的であり、なかなか勉強が難しい造血幹細胞移植領域の、おすすめ参考書を実際に使用した感想を交えて3冊紹介します。
初めて移植症例を受け持った時に移植の本が1冊あると心強いです。
この記事で紹介する移植の参考書 3冊
この記事で紹介するのは下記の3冊です。
- 造血幹細胞移植ポケットマニュアル
- 造血幹細胞移植診療実践マニュアル
- 自家末梢血幹細胞移植マニュアル
①造血幹細胞移植ポケットマニュアル
この本の役立つ場面
- 自家移植、同種移植の困ったとき全般
この本でわかるようになること
- 移植患者のドナー検索、移植の適応、移植前準備、入院管理、退院後のフォローアップまで
- ⇒例えば、GVHD予防の免疫抑制剤の具体的な投与量、投与方法など
本書は自家・同種末梢血幹細胞移植の治療の最初から最後までサポートしてくれる本です。
3年目以降、初めて血液内科外来を担当する若手医師に必携の本です。
著者は、国立がん研究センター中央病院の福田隆浩先生です。
国内有数の移植施設であるがんセンターのノウハウは詰まっており、実際にがんセンターに勤務されている若手の先生も日常診療で使用されているとおっしゃっていました。
移植前の準備編、入院編、外来フォロー編の3章に分かれており、段階的に参照できます。
移植を初めて行う際、まず戸惑うのが普段使用しない免疫抑制剤の投与量です。本書では具体的な投与例を含めて記載されています。
巻末に腎機能障害時の薬剤投与量なんてものも載っており、重宝しています。
②造血幹細胞移植診療実践マニュアル
この本の役立つ場面
- 自家移植、同種移植の困ったとき全般
この本でわかるようになること
- 移植治療におけるエビデンス
- 移植治療の基本
本書は自家・同種末梢血幹細胞移植治療におけるエビデンス・著者の経験がたくさん詰まった本です。
著者はEZR(無料の統計ソフト)を開発するなど多彩な才能をお持ちの神田善伸先生です。
血液内科レジデントマニュアルも執筆されている先生です。
1冊目で紹介したポケットマニュアルは具体的な投与量・スケジュールが載っていることが特徴です。
対して本書は最初の章が非常に教育的で、移植の原理や適応、考え方、HLA適合の考え方、HLAアリル不適合が移植成績に及ぼす影響などなど、はじめに移植を基本から勉強するのに適しています。
多数の臨床試験、RCTのエビデンスに基づいた解説がなされており、目の前の患者さんの対応をすぐ知りたいときというよりは腰を据えて学ぶときにおすすめです。
③自家末梢血幹細胞移植マニュアル
この本の役立つ場面
- 自家移植の困ったとき全般
この本でわかるようになること
- 自家末梢血幹細胞移植の適応から移植後の合併症管理まで学べる
本書は自家末梢血幹細胞移植治療に特化した数少ない参考書です。
著者は岡山県赤十字血液センター所長の池田和眞先生です。
内容としては、
- 自家末梢血幹細胞移植の概要
- 自家末梢血幹細胞移植の適応
- 自家末梢血幹細胞採取
- 自家末梢血幹細胞の凍結・保存
- 自家末梢血幹細胞移植の実際(移植前評価~生着)
- 移植後の副作用管理
といった自家移植ならこの一冊ですべて完結するようなものとなっています。
特に幹細胞採取の章は、そのほかの移植関連の本より詳しく、岡山大学病院の採取工程表の例が載っており、採取時の合併症や注意点がとても参考になりました。
記事のまとめ
今回は3冊の医学書を紹介しました。
- 造血幹細胞移植ポケットマニュアル・・・薬剤の具体的な投与方法がわかる、参照がしやすい
- 造血幹細胞移植診療実践マニュアル・・・豊富なエビデンスに基づいた移植診療ができる
- 自家末梢血幹細胞移植マニュアル・・・自家移植のみ行う施設で〇
①と②についてはどちらも非常に使いやすいですが、
- ①は主に参照用
- ②は主に勉強用
といった使い分けがよいかもしれません。
コメント