この記事では、初期研修医・内科医に役立つ、リウマチ膠原病内科のおすすめ参考書を3冊紹介します。
この記事で紹介する3冊
この記事で紹介するのは下記の3冊です。
- 膠原病診療ノート
- ケースでわかるリウマチ・膠原病診療
- ジェネラリストが知りたい 膠原病のホントのところ
①膠原病診療ノート
本書は、膠原病診療のバイブル的な本です。
文字が多く少し難しいですが、膠原病の臨床をする上で初めにお勧めしたい1冊です。
著者は膠原病領域で有名な三森明夫先生(現 東京山手メディカルセンター リウマチ膠原病科 顧問)です。
膠原病疾患は、いわゆる教科書通りの解説だけでは説明のつかない病態も多いです。
そういった際、もちろん一つ一つ論文に当たって調べることも求められますが、初学者ではなかなか目的の論文にたどり着けないことも多く、さらに全てを調べるのはなかなか時間的にも難しいです。
本書ではやリウマチ膠原病診療の経験豊富な三森先生が、ご自身の経験やエビデンスを凝縮し、リウマチ診療における疑問点を解決してくれるような内容になっています。
本書ではステロイドの使い方や膠原病全般の診断の考え方など基本的な膠原病診療の解説が豊富であり、自験例も交えて複雑な病態を解説してくれています。
対象となる読者は、初期研修医から専攻医はもちろんのこと、専門医になってからも使用している先生も多いです。
リウマチ膠原病疾患は外来診療がメインと考えられがちですが、治療導入や治療関連の合併症などでの入院例も少なくなく、特に初期研修では入院患者を診療する機会が多いかと思います。
本書では入院管理と考えられるような病態に関しても詳しく記載されており、入院症例を診る非専門医の先生も一冊もって参照することができ、その点が特におすすめです。
②ケースでわかるリウマチ・膠原病診療ハンドブック
著者はリウマチ膠原病領域の参考書を多数執筆されている、萩野昇先生です。
萩野先生は他にも ロジックで進める リウマチ膠原病診療 なども書かれておりおすすめなのですが、今回紹介する本の第1-2章でほぼ同等の内容が網羅されていると考え、本書をおすすめとしました。
本書は図やイラストが多く視認性が高いので、初学者でも分かりやすくなっています。
①で紹介した膠原病診療ノートが難しく、文字が多くて読みにくいなと感じた方は、本書を読むといいでしょう。
実際の症例提示から得られる知見をわかりやすくまとめ、一般化しているところが本書の特徴です。
自己炎症性疾患の記載がわかりやすいのもおすすめポイントです。
③ジェネラリストが知りたい 膠原病のホントのところ
本書は萩野昇先生と竹之内盛志先生(一宮西病院 救急総合診療科)の対話形式の参考書です。
②のケースでわかるリウマチ・膠原病診療より、さらに読みやすく、3-4時間で通読できます。
総論ではリウマチ診療の身体診察、検査の解釈、症候別の鑑別診断が書かれています。
各論では、リウマチ膠原病疾患の中でもコモンである関節リウマチ、CPPD、変形性関節症、痛風、リウマチ性多発筋痛症が詳説されており、主に内科外来で活躍します。
特に痛風やCPPDは良く遭遇するにもかかわらずちゃんと学ぶ機会が少ないため、本書で書かれている実際の診断・治療方法はすぐに役立ちます。
SLE、皮膚筋炎、強皮症といった膠原病の各論はありませんが、まずは良く出会う疾患を、途中で挫折せず勉強するには非常におすすめです。
記事のまとめ
膠原病診療は当ブログ運営者の専門領域になるため紹介しだすとキリがないのですが、今回はなるべく初学者でもわかりやすい本を厳選して3冊紹介しました。
- 膠原病診療ノート・・・膠原病診療のバイブル、専門医になってからも使うことも
- ケースでわかる リウマチ・膠原病診療・・・イラストが多く読みやすい
- リウマチ膠原病診療のホントのところ・・・半日弱で通読できるわかりやすい対談形式の参考書
コメント
コメント一覧 (8件)
この4月から6年生になります。
膠原病内科と呼吸器内科で進路を迷っています。
全身を診ること、免疫、感染症に興味があります。
膠原病内科は感染症や抗菌薬を学ぶ機会は少ないのでしょうか?
また呼吸器内科と膠原病内科の違いやメリット、デメリットを教えて頂けると幸いです。
トム 様
コメントありがとうございます。
その2科で迷っていた先生は私たちの周りでもよく見かけました。
膠原病内科では、免疫抑制剤を使用する機会がとても多いため易感染性の患者さんの感染症を中心に、感染症には詳しくなれます。後期研修で膠原病内科をローテートして、その後に感染症の道に進む先生も以前いらっしゃいました。膠原病内科では感染症や抗菌薬を学ぶ機会はとても多いのでその点は心配ないかと考えます。
呼吸器内科と膠原病内科の比較という点では、大きな違いは診療科特有の手技があるかどうかというところと、がんを診るかそうでないか、というところだと思います。
膠原病内科の最大のメリットは、様々な臓器の合併症に対応する必要があるので、全身を診ることがうまくなるという点にあると思います。一方で科特有の手技というものがあまりなく、自分の担当患者さんが何らかの合併症を起こした際に各臓器の専門診療科にお願いする立場になることが多いのがもどかしく感じることがあるかもしれません。
呼吸器内科は実際にその道に進んだわけではないのでわかりませんが、気管支鏡という他の内科ではできない手技があることと、間質性肺炎などの非悪性腫瘍だけでなく、悪性腫瘍(肺がん)を診る機会があることが特徴だと思います。がんを診たいかどうかというのは診療科を選ぶ一つのポイントになるような気がします。
学生実習や初期研修を通じてご自身にあった診療科が見つかればと思います。
免疫内科や膠原病内科はそもそも標榜している病院が少ないため、勤務医として上の位(診療部長など)になるのも相当な競走だと聞きました。もし勤務医として診療部長などになれなかった場合は、どのようにされる方が多いのでしょうか?
私たち自身が基幹病院の部長職などはないためあくまで印象ですが、私たちの知る限りではどこの病院も膠原病科の医師は不足しているように思いますので、将来性についてはあまり心配していません。現在標榜していなくとも、例えば総合内科医としてリウマチ科をサブスペシャリティーとして一般内科のスタッフで採用されることもありえますし、ニーズ自体はそれなりにあると思っています。ニーズに関しては多少地域差もあるかもしれませんが。。
基幹病院のスタッフになれなかった場合、膠原病科は外来がメインの診療科でもあるので、開業という方法もあります。身近にも比較的若い年次(卒後10数年目)で内科・リウマチ科で開業している医師もいます。
返信ありがとうございます。
実習の際、呼吸器内科の先生方が「使える薬の範囲がとても広い」と仰っていました。
膠原病はどんな感じでしょうか?
呼吸器内科は、取り扱う疾患が感染症や、悪性腫瘍、喘息などのアレルギー、間質性肺炎などと幅広いため、必然的に使える薬の範囲は広いと思います。
一方膠原病は扱う疾患が限られていて、ひと昔前はどの疾患でもステロイドを用いるというのはあると思います。
ただ、膠原病疾患は日々治療が進歩していて、もちろんステロイドも今でも重要な薬剤ですが、いかにしてステロイドを減らすかという観点においても新しい薬剤がどんどん出てきています。
膠原病内科医として活動、勉強をしていれば一般内科に精通できますか?
膠原病内科を専門にする一般内科医が現時点の目標です。
良し悪しはありますが、膠原病疾患のかかりつけ患者さんの高血圧や脂質異常症、糖尿病、骨粗鬆症などステロイド性か否かに関わらず当科で一緒に診療することが多いです。また、膠原病科は、不明熱や不明炎症など、何が起きているかよく分からない患者さんの精査を依頼されることも多く、総合診療科的な側面もあります。
そういった意味で他の専門科(特定の臓器に特化して診る科)と比べると一般内科の経験値は増えると思います。
現実的なところ、(病院によるとは思いますが)専攻医以降は研修病院以外の病院での外勤が始まることが多いと思います。最初は一般内科での外来診療を任されることが多いと思いますので、そこで一般内科の経験は十分得られるのではないかと思います。