【腫瘍内科】がん診療におすすめの参考書 7冊

この記事では、
・がん患者を受け持った初期研修医
・将来がん患者を診療する科に進む初期研修医
・現在がん患者を診療する内科医(腫瘍内科含め)
むけに、がん患者の診療の補助となるおすすめの参考書を7冊紹介します。

これは、200冊超の医学書を自宅に保有する内科医夫婦(血液専門医・リウマチ専門医)によるレビューです。
2人とも市中病院・大学病院で初期研修・後期研修を経験し、現在も研修医指導をしています。
若手医師がどんな疑問点を持って臨床をしているか、それを解決する本はどれかを理解したつもりで書きました。
不明点などあれば遠慮なくご連絡ください。よろしくお願いします。

目次

この記事で紹介する参考書 8冊

この記事で紹介するのは下記の7冊です。

  1. 緩和治療薬の考え方,使い方
  2. フローチャートがん漢方薬
  3. がん診療レジデントマニュアル
  4. ベッドサイドで使える腫瘍循環器入門
  5. がん患者の感染症診療マニュアル
  6. 発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン
  7. 深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014

①緩和治療薬の考え方,使い方

この本の役立つ場面

  • 緩和ケアが必要ながん患者さんを診察するとき

この本でわかるようになること

  • がん患者の終末期に必要な麻薬の具体的な投与量や増量方法

本書は緩和ケアで使用する薬剤の具体的な使用方法をおしえてくれる本です。
終末期を診察する若手医師に必携の本といえます。

著者は、聖隷三方原病院副院長・緩和支持治療科の森田達也先生です。

2013年に初版が出版されてから4年ごとに改訂され2022年1月現在第3版が出ています。

本書では緩和ケアに関して、治療薬ごとに下記がまとまっています。

  • 薬剤の使用感
  • 緩和治療薬に対する副作用対策
  • 薬剤の相互作用
  • 実際の投与方法

European Association of Palliative Care (EPAC)のオビオイドに関するガイドラインともとになったレビユーの文献のまとめもあり、エビデンスに基づいた緩和治療薬処方が学べます。

内科医夫婦(夫)

初めて麻薬を処方するときから、その後の緩和ケアの処方薬の調整までこの一冊で十分です。

ポケットサイズの緩和薬剤の本なら、2022年に出版された下記の東北大学病院緩和ケアBOOKもおすすめです!

②フローチャートがん漢方薬

この本の役立つ場面

  • がん患者の症状を解決する漢方を処方したいとき

この本でわかるようになること

  • がん患者の症状に合わせた具体的な処方アイデア

本書はがん患者に対する漢方の具体的な使用方法をおしえてくれる本です。

著者はフローチャート漢方薬治療などを執筆されている、新見正則先生です。

本書を含め、新見先生は”本当に明日から使える漢方薬シリーズ”を執筆されております。
このシリーズは”本当に明日から使える”をコンセプトしており、漢方を身近に使用できるために最低限必要な知識を得ることができ、私も重宝しています。

なぜ、がん患者で漢方?かというと、

抗がん剤使用中のがん患者さんは、抗がん剤の副作用に対応すればまたその薬剤の副作用に対する薬を処方され、、といった具合にポリファーマシーになりがちです。

一方で漢方は副作用が少ないことが特徴(もちろんゼロではありませんが、、)で、他の薬剤との相互作用もあまり気にせず処方できます。

そのためがん患者さんの訴えに対して漢方というのは非常に相性がいいと実感しています。

本書は難しい漢方の理屈はなく、がん患者さんの訴え・本人の元気度、体格などに合わせて最適な漢方の処方を紹介してくれています。

フローチャートの1ページ目に、ともかく大きな病気には○○!といったややおおざっぱであるものの的確な処方例が載っていて印象的でした。

③がん診療レジデントマニュアル

この本の役立つ場面

  • がん患者の診療に関する全般
  • 初期研修医で腫瘍内科をローテーションするとき
  • 初期研修医で呼吸器内科、消化器内科、消化器外科などでがん患者を受け持ったとき

この本でわかるようになること

  • 様々ながん種の疫学、診断、治療(化学療法のレジメン)、予後

著者は国立がん研究センター 内科レジデントの先生方です。

本書は、さまざまながん種の疫学、診断、治療、予後がわかりやすく記載されています。

特に治療に関してはレジメンが載っており、担当患者さんの使っているレジメンを参照できます。

そのほかにもがんのインフォームドコンセント、がん患者の感染症、オンコロジックエマージェンシーなどがん診療に欠かせない内容が網羅されています。

対象としては初期研修医がローテーションする際に重宝するイメージで、それ以外にもがんの薬物治療に関わるパラメディカルの方々にもお勧めです。

各分野の最新の治療(近年では免疫チェックポイント阻害薬)やエビデンスに合わせるために頻繁に改定が行われています。

このレジデントマニュアルシリーズはいずれもポケットサイズで場所を取らないのがメリットです。

④ベッドサイドで使える腫瘍循環器入門

この本の役立つ場面

  • がん患者の心機能の評価について学ぶとき
  • がん患者が化学療法後に心機能低下を来したとき

この本でわかるようになること

  • 腫瘍循環器という領域について
  • CTRCD(Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction)の概念や分類

本書は腫瘍循環器とは?というところから、臨床における腫瘍循環器で必要な知識を学べる本です。

国際医療福祉大学三田病院心臓血管センター・国際医療福祉大学医学部循環器内科准教授 の田村雄一先生です。

腫瘍循環器の分野は比較的最近注目されている専門領域です。
日本腫瘍循環器学会についても2017年に設立された比較的新しい組織です。

がん治療はご存じの通り日進月歩であり、がんによる予後よりも治療の副作用による臓器機能の予後が重要視される時代になりました。

特に、CTRCD (がん治療関連心筋障害(Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction))の定義や概念はがん患者の治療の上で必須ともいえる内容であるにもかかわらずあまり浸透していないように思います。

まだまだ新しい領域なのでエビデンスに基づいた記載というのが難しい中、本書は臨床にも直結するように工夫されて書かれています。
重要だけれど意外と知られていない領域の本で、初学者にもとっつきやすい内容で書かれているため紹介しました。

内科医夫婦(夫)

がんサバイバーの心血管疾患のフォローに必要な知識も載っています

⑤ がん患者の感染症診療マニュアル

この本の役立つ場面

  • がん患者の感染兆候をみたとき

この本でわかるようになること

  • がん患者における、感染症診療の基本を学べる
  • がん患者に限らない、感染症診療の基本を学べる

本書は感染症診療の”5つのロジック”を用いて、がん患者の感染症診療の考え方を学べる本です。

監修は、国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター長の大曲貴夫先生です。
同院はデング熱、エボラ出血熱、MERS、ジカウイルス、そして新型コロナウイルスなどの感染症対応の最前線の病院です。
国立国際医療研究センター病院の感染症治療のノウハウをがん患者に当てはめたのが本書になります。

ポケットサイズながら感染症診療のロジックを系統的に学べます。

大曲先生の参考書では感染症診療の5つのロジックが出てきます。
詳細は読んでいただければと思いますが、私は5つめのロジックである”(治療開始後の)適切な経過観察“というのが特に重要だということを大曲先生の本から学びました。

内科医夫婦(夫)

そのほか、がん患者や造血幹細胞移植後の患者の予防接種についても記載されており、移植患者を診察する血液内科医にも重宝します。

改定2版の出版が2012年でその後改定はありませんが、普遍的なことが書かれているので今読んでも内容が古いという感じはしません。

内科医夫婦(夫)

私は初期研修医でがん患者を受け持った際に最初に読みましたが参考になりました。初期研修医にもおすすめです!

⑥発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン

この本の役立つ場面

  • 発熱性好中球減少症を診たとき
  • 現在受け持っているがん患者の発熱性好中球減少症のリスクを知りたいとき

この本でわかるようになること

  • 発熱性好中球減少症の対応をフローチャートを用いて確認できる
  • どのような患者にG-CSF・抗菌薬・抗真菌薬の予防投与が必要かがわかる

本書は日本臨床腫瘍学会の編集によるガイドラインです。

⑤で感染症診療のロジックを学んだあとは、実際に患者を診療する際にお供として置いておきたい本です。
本が薄いので場所をとりません。

⑦深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014

この本の役立つ場面

  • 真菌感染症を疑ったとき
  • どんなときに真菌感染症を疑えばよいかわからないとき

この本でわかるようになること

  • 深在性真菌症の疫学、診断と治療

本書は深在性真菌症のガイドライン作成委員会が編集した、各真菌感染についてのフローチャートを参照したり、真菌感染症全般の診断方法や疫学などを横断的に勉強するのに適した本です。

  • 1章で各領域(内科、血液内科、耳鼻科、外科、小児科、移植、、)毎に深在性真菌症のガイドラインが記載されており、自分の専門領域での疑うべき真菌感染症やリスク、診断、治療が参照できます。
  • 2章では、真菌感染全般の疫学・病態・診断・治療が学べます。
  • 3章では1章のガイドラインの詳細な解説がしてあります。
  • 4章では、カンジダ感染症、アスペルギルス感染症、小児真菌感染症、造血幹細胞移植での真菌感染症といった状況毎の診断(リスクファクター、疑う兆候)、推奨治療のチェックリストが掲載されています。
  • 忙しいときは1章でチャートに従い診断治療に役立つ
  • しっかり勉強したいときは2章を読めば真菌感染の総論が学べる

ので、外科系の先生をはじめ真菌感染になじみの薄い先生にもおすすめの一冊です。

記事のまとめ

今回は7冊の医学書を紹介しました。

  1. 緩和治療薬の考え方,使い方・・・緩和治療薬の具体的な処方
  2. フローチャートがん漢方薬・・・がん患者の症状に合わせた漢方薬がわかる
  3. がん診療レジデントマニュアル・・・おなじみのレジマニュシリーズ
  4. ベッドサイドで使える腫瘍循環器入門・・・歴史は浅いが今後重要になるだろう分野の入門編に
  5. がん患者の感染症診療マニュアル・・・一般の感染症診療の原則も載っている
  6. 発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン・・・GCSFの予防投与などがわかる
  7. 深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014・・・チャートに従い診断と治療がわかる
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この記事を書いた人

初期研修医や内科診療に携わる若手医師、医療従事者への日々の診療・生活の手助けになるような発信をします。
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