漢方薬の使い方 基本ルールと具体的な処方例 【おすすめ参考書も紹介】

漢方薬の使い方 基本ルールと具体的な処方例 【おすすめ参考書も紹介】

この記事では内科医夫婦が日常診療で使っている漢方薬について、初学者向けに説明をした記事です。
漢方を使ってみたいけれど経験が乏しくてハードルが高い若手医師向けに、主に内科診療で筆者が実際に使用している漢方薬の使い方を紹介します。詳しく勉強したい方のために、おすすめ参考書も紹介します。

  1. まずは何回か使ってみる
  2. 使用する患者像を自分なりにイメージできる
  3. 患者さんの訴えを取り除ける確率がどんどん上がってくる

という手順で漢方が使えるようになるのを目指します。

漢字が多く覚えるまでが大変なので、このページではごく一般的な使用方法をコンパクトに紹介します。
詳しい方がご覧になるとツッコミどころは多いとは思いますが、あくまでもシンプルさ重視なので、ご容赦ください。

目次

初心者向けの使い方のルール

・漢方は食べ物と同じでアレルギーがなければ基本的に処方可能。

・内服は吸収率を高めるために食前or食間が原則だが、食前食間投与が難しい場合は食後でもOK。特に高齢者で食前だと飲み忘れが多いという場合などは忘れるよりは食後に飲んだほうが良い。

・効果のある順(薬剤により例外あり):白湯に溶かす>白湯で飲む>水で飲む

症候別 具体的な処方方法

特に院内採用が多そうな薬剤をpickupして紹介しています。
簡略化のため一つの漢方につき一言二言までにしています。
ご活用ください。

腹部症状系

大建中湯(ダイケンチュウトウ):術後イレウス予防に エビデンス豊富

五苓散(ゴレイサン):胃腸炎、二日酔いに 

六君子湯(リックンシトウ):食欲低下に 胃内容排出効果あり

柴苓湯(サイレイトウ):夏の胃腸炎に

神経系

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ):筋けいれんに 即効性あり

抑肝散(ヨクカンサン):高齢者のイライラ、せん妄に

抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ):食欲低下、抑うつを伴うイライラに 小児夜泣きに

牛車腎気丸(ゴシャジンキガン):しびれに ケモの副作用に対して

全身症状系

補中益気湯(ホチュウエッキトウ):体力低下している人の 倦怠感に

十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ):体力低下している人の さらなる倦怠感に

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン):更年期障害に

加味逍遙散(カミショウヨウサン):特に更年期女性のイライラに

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ):のどのつかえに

半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ):みぞおちのつかえに

感冒系

葛根湯(カッコントウ):風邪かな?と思ったときに初期に

麻黄湯(マオウトウ):体力ある人の 悪寒のあり汗の出ない風邪やインフルエンザの初期に

麦門冬湯(バクモンドウトウ):しつこい咳に

小青竜湯(ショウセイリュウトウ):鼻水、鼻づまりに

葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ):鼻づまり、副鼻腔炎に

麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ):悪寒、四肢冷感に

漢方のおすすめ参考書 3冊紹介

①フローチャート漢方薬治療 (本当に明日から使える漢方薬シリーズ)

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この本の役立つ場面

  • 患者さんの症状を解決する漢方を処方したいとき

この本でわかるようになること

  • 患者の症状に合わせた具体的な処方アイデア

本書は患者さんの具体的な使用方法をおしえてくれる本です。

著者は、新見正則先生です。

新見先生は自身を漢方医ではなく、漢方が趣味の西洋医であると称されています。
初心者視点でわかりやすく漢方処方の例を紹介してくれているので、漢方にまだまだなじみの薄い先生にもとっつきやすい本になっています。

本書を含め、新見先生は”本当に明日から使える漢方薬シリーズ”を執筆されております。
このシリーズは”本当に明日から使える”をコンセプトしており、漢方を身近に使用できるために最低限必要な知識を得ることができ、重宝しています。

一般的な“漢方治療“は
全身を診て、症状に対して→漢方薬処方
となりますが、
本書で紹介している”漢方薬治療”は西洋医学的な面も取り入れ、症状、検査をする→診断がつく→漢方薬処方
となっています。
診断がついたところで処方することでキーワード(病名・症状)的処方が可能で、初学者でも簡単に処方ができる・フローチャート化できるという利点があります。

漢方処方では、まず使ってみて、あまり効かなかったらほかの処方を試すというケースが多いです。
本書では症状や病名ごとにフローチャート化されており、第一選択薬が載っており、それで聞かなかった時の対処法も書いてあるので、漢方処方のハードルが非常に低くなっています。

内科医夫婦(夫)

最終章では処方が思いつかないときの処方、というのも載っています

誰でも使えるフローチャートだからこそ、まずは数多く試してみて、試した回数が多ければフィットした処方の数も増えていくという考え方です。

内科医夫婦(妻)

ポケットサイズで場所を取りません

同じシリーズの、がん診療における漢方薬処方に特化した参考書の紹介は下記で紹介しています。

②本当に明日から使える漢方薬―7時間速習入門

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この本の役立つ場面

  • 漢方について、初心者の視点からもわかりやすく勉強したいとき
  • 使い始めた漢方についてもう少し詳しく勉強したいとき

この本でわかるようになること

  • 初学者の漢方の勉強法
  • 漢方処方で困ったときの処方

本書は初学者向けの漢方入門書です。

著者は、①と同じ新見先生です。

7時限目までにわけて、

  • 漢方が本当に効くのか?という疑問からはじまり
  • まずは風邪に対する処方を学び、
  • つぎに腹部症状に対する処方を学び、
  • そのほか症状別の処方を学ぶ、、 

といった具合に非常に実践的な入門書です。

内科医夫婦(夫)

本当に7日で使えるようになります!


最後の章で漢方の勉強法(指導医の見つけ方等々)が載っており、単なる処方方法だけでなく系統的に漢方を勉強し始めたいという方におすすめです。

③つまずきから学ぶ漢方薬 構造主義と番号順の漢方学習

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この本の役立つ場面

  • 漢方を番号順に勉強したいとき
  • 使い始めた漢方について概念を含めてもう少し勉強したいとき

この本でわかるようになること

  • 漢方の番号順での学習ができる
  • 漢方の重要な概念(気血水)がわかる

本書は、感染症医として有名な岩田健太郎先生です。
特徴としてはタイトルにもある通り番号順に漢方薬を開設されているところです。
本書では最初の100ページくらいで漢方の総論、頻用する漢方薬(まずは麻黄湯、、)について、後半で番号順に漢方薬の解説がされています。

総論では気血水、陰陽五行説といった漢方を理解しようとした際に重要な概念を岩田先生が咀嚼してわかりやすく解説してくれています。

図などは少なく読む分量は多いものの、岩田先生の著書を読んだことのある方であれば、おなじみの語り口で書いてくれていてすらすらと読み物感覚で通読可能です。

内科医の視点で、ポリファーマシー対策としての漢方についても解説してくれています。

①、②で紹介したように漢方を症状ごとで解説する本は多いですが、本書のような番号順で解説するほうがわかりやすいという方にも特におすすめです。

内科医夫婦(夫)

患者さんの中にも漢方を番号で呼ぶ方も少なくありません…

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この記事を書いた人

初期研修医や内科診療に携わる若手医師、医療従事者への日々の診療・生活の手助けになるような発信をします。
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