この記事では血液専門医試験について問題形式や自分が受けた際の感想、実際の問題の一部を紹介します。おすすめの勉強方法や参考書も紹介しますので、これから受験される若手の血液内科の先生・小児科の先生の参考になれば幸いです。
試験の概要:問題形式・合格率・日程・合格発表
文章問題 60問+血液形態学・検査学問題 20問 となっています。
文章問題のうち20問と血液形態学・検査学問題のおわりの4問は成人or小児科の選択問題で、出願時に選択したほうを解く必要があるので注意が必要ですでした。すべての問はマルチプルチョイス形式で1つもしくは2つ選ぶ形式です。
文章問題 全59問
●成人・小児科共通問題
問1-25 国試で言うところの一般問題
問26-40 国試で言うところの臨床問題(臨床の症例1つにつき、1問もしくは2問、画像所見がついていることもあり)
●成人・小児選択問題
問41-46 国試で言うところの一般問題
問47-59 国試で言うところの臨床問題(臨床の症例1つにつき、1問もしくは2問、画像所見がついていることもあり)
と、
血液形態学・検査学問題 全20問
●成人・小児科共通問題
問1-17 各問に画像が載っており、それに関する一般・臨床問題(症例が載っている問題も一部あり、症例1つにつき必ず1問)
●成人・小児選択問題
問18-21 国試で言うところの一般問題
の2部に分かれており、120分の時間内に両方を解きます。
問題数や配分は年度によって異なる可能性はありますが、別年度に受験された先輩にも確認したところ例年同様のようです。
以前は文章問題と形態学・検査学問題で独立して合格ラインを設けていたらしいですが、現在は合算して合格ラインを設けているようなので上記の形式はあまり気にしなくても大丈夫だとは思います。
実際のイメージ掴みに参考にしてください。
実際の形式毎の問題例については血液専門医テキストの巻末に過去問が載っているのと、実際筆者が受験した際の問題の再現を記事の最後に書いておきました。
日程については、例年6月下旬に行われています。
合格率は8-9割程度のようです(※2008年以前のデータしか見つけられませんでした…)。
合格発表は受験後約2か月程度で、郵送で結果が送られてきました。
しっかり対策すれば問題なく合格できるはず
実際に受験した感想
全体を通した感想
試験時間が120分で問題数80問ですが、簡単な問題は1分未満ですぐに解けるので、1週目に7-8割の問題を60分程度で解いて、2週目にわからなかった問題をチェックして考え直して(30分)、マークミスなどの最終チェック(10分)をして20分くらい余るくらいでした。
最後の見直しで自信をもって解けた問題の数を数えて8割くらいあったことを確認して試験がおわりました。
残り30分になると途中退出可能で、まわりでごく数名途中退出されている方もいました。
簡単な問題とよくわからない問題とのギャップがあった印象だったので、(どんな試験にもいえますが、)難しい問題に気を取られて足元をすくわれないように注意することが重要だと思います。
知識を問うような一般問題でわからない問題がいくつかありましたが、臨床問題に関して診断名がわからないというような問題や悩む問題はほぼなかったです。
全体を通して細部にこだわらなければ時間が足りないということはまずないと思います。
ある程度点数はとれたという感触はあるのですが、合格に必要な点数が開示されておらず不明なので、試験が終わってから結果が出るまでは不安でした。
問題の内容の感想
まずは、凝固が難しいと感じました。
凝固の問題が特別多いわけではないと思うのですが、これは、 出るウェイト>>普段経験する頻度 のためだと思います。よって、凝固は重点的に勉強するのが良いでしょう。
つぎに、日ごろから悪性腫瘍をメインで扱うためリンパ腫や白血病、骨髄腫に関する問題はあまり迷うことはなかったですが、鉄動態は頻出で、かつ普段の臨床では意識する機会が少ないのでこちらも血液専門医テキストなどで重点的に勉強するのをおすすめします。
そのほか、血液形態学・検査学問題に関しては、リンパ節生検病理の写真や血液形態像になじみがないと難しい問題がいくつかありました。
・リンパ腫に関しては、臨床情報はなく、CD20免疫染色、HE染色の病理所見のみで診断名を問う画像一発問題がありました。
・血液形態像に関しては、赤血球内にギムザ染色で暗青色の封入体がある写真があり、パッペンハイマー小体やハウエルジョリー小体などの選択肢から選ばせる画像問題がありました。
ほかに印象的だったのが、比較的新しい内容も出ていることです。
例) サイトカイン放出症候群(CARTの有名な副作用)が選択肢の一つに出てきた問題
例) Inotuzumabの標的(CD22)を問う問題
例) Daratumumabの投与時の注意点を問う問題
血液内科領域はご存じの通り日進月歩ですので、知識のブラッシュアップが必要なのは日常臨床も試験も同様です。
いつから勉強するか?
私含め周りの知人の方々に聞いてみると3-6か月くらい前からやっている先生が多いようです。(全員1回で合格しています)
ただし、どの施設(大学病院、市中病院、移植専門施設etc..)でどのくらいの期間臨床に携わっていたかや病棟だけでなく外来を診ていたかという点は重要です。
- 病棟メインでいた先生はMPNなど外来で診る機会の多い疾患の勉強を補う必要がありますし、移植施設での臨床経験の少ない先生は移植の合併症や適応、幹細胞採取を追加で勉強する必要が出てきます。
- 大学院生や家庭の事情などで長く臨床を離れた場合は最新の臨床の知識を入れることも重要になります。
- 小児科の先生が受験される際は成人でしか診ることのない疾患(多発性骨髄腫など)を個別に勉強する時間も必要かもしれません。
各々の背景により一概には言えませんが、現行(新専門医制度下)では医師7年目くらいで受ける血液専攻医が臨床のブランクがなく受験することを想定すると、上記の勉強期間があれば十分ではないかと思われます。
私はだいたい3-4か月前くらいから、寝当直中のまとまった時間を利用して勉強していました。
おすすめの勉強法
まずは過去問をやってみる
血液専門医テキストの巻末に過去問が数問載っています。こちらは日本血液学会が公式で出版しているテキストです。
実臨床で多用するかは人それぞれですが、この巻末の過去問はおそらく全員やっていると思われます(=差がつかない)。また、確かに似たような問題は出たものの全く同じ問題は出なかったです。
内容もどんどん古くなってきているので、ここはあくまでどんな問題の雰囲気かを理解するにとどめるのがよさそうです。
一方、テキストの本文に関しては、選択肢の文章がこのテキストの文章そのまま出ている問題も例年あるようで、ベースにするのはやはりこの本が無難かと思います。
本書に関しては、リンパ腫の病理所見の写真も多数掲載されており、形態問題対策に眺めておくのもおすすめです。
凝固領域の対策が重要
感想の項で説明した通り、凝固に関しては時間があれば個別にしっかり勉強するのがよいでしょう。
参考書については下記がおすすめです。
クロスミキシング試験のグラフが頻出項目のようです。
日常的に見るものではないですが、一度見れば忘れないと思うので確認しておくといいでしょう。
検査問題対策に
検査の問題は日常臨床のみでは対応が難しく別途勉強すると安心です。
骨髄穿刺スメアや末梢血スメアは血液細胞ノートで正常所見から勉強するのが個人的におすすめです。
リンパ腫病理は一から勉強するのは難しかったので、血液専門医テキストの画像集の項を見たくらいでした。
血液内科の臨床としばらく離れていていた方は
臨床としばらく離れていた方は、臨床の知識を再確認する必要があるかもしれません。
そうした方には
- 血液内科ただいま診断中!
- 血液内科ただいま回診中!
がコンパクトにまとまっており臨床の知識の整理に役立ちおすすめです。
小児科の先生向けに
小児科の先生に関しては骨髄腫やMDSを診る機会は少ないと思われ、分野別の勉強を早めにするのが良いかもしれません。
内科・小児科共通問題でもこれらの分野は結構出ていました。
- ブラッシュアップ骨髄不全症(MDS、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、赤芽球癆など)
- ブラッシュアップ多発性骨髄腫
が各疾患をうまくまとめてくれていて勉強におすすめです。
そのほかのおすすめ勉強法
2020年度分くらいから、月刊誌 “血液内科” (科学評論社)の巻末に毎月4-5問の血液専門医試験と同じ形式の問題が載っています。
私もこの問題を解いて本番に臨みましたが、実際はまったく同じ問題、もしくは類題はでませんでした。
しかし、内容的には最新の内容に触れた問題ばかりで解説もしっかりしているのでやっておくと安心です。
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