この記事では初期研修医や若手内科医向けにマイナー領域の参考書を紹介します。
マイナー領域の非専門医に向けた本は少なく、また眼科や泌尿器科などは初期研修でまわるタイミングがない病院もあるためまとまって勉強する機会が限られます。
今回紹介した本で非専門医が必要なマイナー領域の知識を吸収できるといいでしょう。
この記事で紹介する本
この記事では、眼科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、麻酔科、マイナー領域全般のおすすめ参考書を各1冊紹介します。
眼科:ジェネラリストのための眼科診療ハンドブック
この本の役立つ場面
- 救急外来で眼科的症候に出会ったとき
- 内科疾患で眼科の合併症が出たとき
この本でわかるようになること
- 眼科的救急疾患の緊急度がわかる
- 眼症状に対して眼科医へ相談すればよく、どこまでは自分で診てよいのかがわかる
- 全身疾患の合併症としての眼症状への対応がわかる
本書は非眼科医向けに眼科領域の疾患、症候を写真付きで解説した本です。
著者はみさき眼科クリニック院長の石岡みさき先生です。
本書は眼科専門医以外向けに書かれているので、初期研修を経験していない医師でも頭に入ってきやすいです。
第一部では、眼科的症候を緊急度別に眼科に至急受診、翌日には受診、1週間以内には受診、眼科医以外でも対応可能、4つに分けて紹介してくれています。
第二部では、プライマリケアとしての眼科症状への対応(結膜炎、充血、眼部帯状疱疹、緑内障)や内科疾患との関連(シェーグレン症候群、甲状腺疾患)、点眼の使い方が紹介されています。
第三部では、眼底写真、眼科を初診する他科疾患、角膜移植についてなど眼科に関する知って得する知識が紹介されています。
薬剤の副作用による眼症状(抗がん剤の副作用やインターフェロン網膜症など)も載っており、がんを診る医師にもおすすめ
整形外科:骨折ハンター
この本の役立つ場面
- 救急外来で外傷の症例が来たとき
- 病棟当直で転倒でコールを受けたとき
この本でわかるようになること
- 外傷の受傷起点から鑑別診断の想起→診断→マネジメントまでのstepがわかる
著者は札幌東徳洲会 救急センター 副センター長 増井伸高先生です。
増井先生は救急医として、本書以外にも“結局現場でどうする? Dr.増井の神経救急セミナー”、心電図ハンターなども執筆されています。
救急外来で外傷が来た時、確認することの一つとして、骨折の有無が挙げられます。
外傷症例に対して、
1. 年齢と主訴から鑑別疾患と骨折線イメージを実臨床でも挙げられる
2. 画像確認後に『診断名』と『マネジメント』を言い当てる
3. マネジメント方法を理解する
とステップごとに理解すべきことが書かれています。
本書中のPart1では診断が中心に書かれており、Part2では実際のマネジメント、非整形外科医でもできる整復や固定の方法が書かれており、非専門レベルではこれだけで十分という内容になっています。
特に救急外来で外傷の初期対応をしなければならない初期研修医におすすめですし、初期研修修了後も内科当直でも簡単な外傷をみなければならない状況も十分あります(例:病棟当直での高齢者の転倒でコールを受ける等)。
外科系当直であれば専門外の外傷を見る機会は多いかと思います。
皮膚科:すべての診療科で役立つ皮膚診療のコツ
この本の役立つ場面
- 一般内科外来で皮膚疾患を診たとき
- 病棟管理で皮膚疾患を診たとき
- 訪問診療やへき地医療で皮膚疾患を診たとき
この本でわかるようになること
- commonな皮膚疾患の対応がわかる
本書はタイトル通り、非専門医向けに皮膚疾患毎に実際の症例写真とその対応が書かれている本です。
- 第一章ではよくある症例
- 第二章では鑑別に迷う症例(カンジダ性間擦疹とおむつ皮膚炎の鑑別など)
を紹介しています。
コラムも秀逸で、褥瘡の治療、ステロイド外用の違い、剤形(軟膏、クリーム、ローション)の違い など非専門医が迷うポイントが押さえられています。
皮膚疾患に関する知識が意外に重要になってくる状況として、訪問診療が挙げられます。
これから訪問診療を始めようという方に、本書は特におすすめです。
読みやすいと評判の羊土社の出版した参考書です
類書に、薬剤の使い方に特化した本もあります。
どちらもおすすめですが、見た目が似ているので買うとき間違えないように注意。
泌尿器科:排尿障害で患者さんが困っていませんか?
この本の役立つ場面
- 主に入院患者の排尿障害を対応するとき
この本でわかるようになること
- 頻尿および尿閉への薬剤処方、排尿管理の方法がわかる
本書は非専門医向けに排尿障害の対応を説明した本です。
高齢化に伴い、排尿障害を訴える患者さんが増えています。
本書では排尿障害の薬剤の使用方法だけでなく、尿道カテーテルの管理や自己導尿、排尿日誌、おむつの選び方まで、排尿管理について詳しく学べます。
症候としては頻尿と尿閉に大きく二つに分け解説してくれ、頻尿に対する薬の使い分け、尿閉を来しやすい薬剤と対応など詳しく理解できます。
排尿障害の薬剤一覧が見開き1ページで紹介されていて、よく参照します
麻酔科:麻酔科研修チェックノート
この本の役立つ場面
- 麻酔科志望でない初期研修医が麻酔科ローテーションを乗り切るとき
この本でわかるようになること
- 麻酔科研修で必要な知識全般
本書は初期研修の麻酔科ローテーションでの疑問を解決してくれる初期研修医必携の本です。
麻酔科は初期研修でローテーション必須となっていますが、業務内容がほかの診療科と比べて極めて特殊です。
筆者自身も、麻酔科研修において何を勉強すればよいか、何を準備すればよいかが当初よくわからず困った覚えがあります。
本書をよめば麻酔に関する予習・復習から業務の実際までが一通りわかり、研修の役に立ちます。
実際の手技や使用する薬剤の一覧が載っています。
麻酔科志望ではない初期研修医であれば、この一冊で必要十分と思われます。
初期研修医の同期はだいたいみんなこれを持っていました。
精神科:精神診療プラチナマニュアル
この本の役立つ場面
- 精神科ローテーションの際
- 診療科問わず、病棟当直の際
この本でわかるようになること
- 精神科の薬剤の使い方がわかる
本書は感染症プラチナマニュアルの精神科versionの本です。
筆者自身の経験としても、専門の診療科(内科)に進んだ後も睡眠薬やせん妄に対する対応などで本書が参考になる場面に多数遭遇しており、重宝しています。
ポケット版で参照しやすいのが特徴です。
ポケット版ながらも、統合失調症や気分障害だけでなく、ギャンブル依存や脱毛症などについても書いてあります。初学者にもわかりやすく書かれており、精神科で頻用する薬剤に対する理解が深まります。
マイナー科全般:内科医が知っておくべき疾患102
この本の役立つ場面
- 総合内科外来で内科領域以外のコモンディジーズの対応が必要なとき
- 医療アクセスが限られる施設(マイナー科の専門医が不在など)で勤務しているとき
この本でわかるようになること
- マイナー科領域(皮膚科、眼科、耳鼻科、整形外科、小児科、精神科、形成外科、歯科口腔外科、婦人科)の疾患の臨床的な必須知識・初期対応がわかる
本書は内科医・ジェネラリスト向けにマイナー領域の疾患、症候を写真付きで解説した本です。
編集は京都大学名誉教授の宮地良樹先生です。
一般内科、総合内科として勤務していると、内科領域以外でもマイナー科のコモンディジーズで患者さんから相談いただくケースが多々あります。
“餅は餅屋”ではあるのですが、ある程度よく遭遇する疾患では内科医として初期対応を知っていて損はないなと思うことがあります。
そんな時に役立つのが本書です。
本書は各章ごとにいわゆるマイナー科の専門の先生方が外来でよく診る疾患・病態を、非専門家に対してもわかりやすく解説してくれています。
掲載されている領域は下記のとおりです。
- 眼科(ドライアイ、眼痛、、)
- 皮膚科(帯状疱疹、爪白癬、アトピー性皮膚炎、、)
- 耳鼻科(花粉症、鼻出血、、)
- 泌尿器科(膀胱炎、過活動膀胱、、)
- 小児科(麻疹、風疹、虐待、、)
- 精神科(うつ、せん妄、不眠、、)
- 婦人科(更年期障害、、)
- 乳腺外科(乳腺炎、、)
- 整形外科(五十肩、腰痛、、)
- 形成外科(傷のプライマリケア、リンパ浮腫、、)
- 歯科・口腔外科(口内炎、齲歯、、)
初期研修では上記領域をすべて経験することは困難かと思われるので、実臨床でマイナー領域の疾患を学ぶ機会は限られるため、本書のような参考書はとても重宝します。
特に皮膚科や眼科は遭遇頻度の高い症候が満載なのですぐ役立ちます。
マイナー科毎の参考書をすべて持っているのはちょっと、、というかたはこの一冊で広く網羅されているのでおすすめです。
記事のまとめ
今回は
- 眼科
- 整形外科
- 皮膚科
- 泌尿器科
- マイナー科全般
のおすすめ参考書を一冊ずつ紹介しました。
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